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ドライアイスと冷蔵庫の正しい併用方法
安全に安置するための実務ガイド

ご遺体用冷蔵庫はドライアイスの代替にはなりません。30年の搬送実績に基づく、正しい併用方法と安全上の注意点を解説します。

結論:冷蔵庫はドライアイスの代替ではなく、併用が前提です。

弊社(吉澤企画)の搬送部門では、葬儀社様から冷蔵庫(安置所)でのお預かりをご希望される場合、必ず初期のドライアイス処置を行っていただくことをルールとしています。ドライアイスを当てずにお預かりすることはありません。「冷蔵庫があればドライアイスは不要」という誤解がありますが、それは正しくありません。冷蔵庫とドライアイスは役割の異なる保全手段であり、正しく組み合わせて初めて、ご遺体を良好な状態で安置し続けることができます。

なぜ冷蔵庫だけでは不十分なのか

細菌の繁殖は5℃で抑制され、0℃で停止するとされており(死後処置専門サイト「エルプランナー」の知見より)、冷蔵庫の庫内温度だけでは腹部を十分に冷やすことができません。実際に、搬送後ただちに冷蔵庫(4℃設定)に安置されたご遺体が、ドライアイスを装着しないまま2日間経過した結果、腹部に腐敗性変色が生じた事例が同サイトで報告されています。

低温(繁殖しにくい) 高温(繁殖しやすい) 0℃ 繁殖が停止 2〜3℃ 冷蔵庫の実運用 5℃ 繁殖が抑制
冷蔵庫の庫内温度(2〜3℃)は細菌の繁殖を抑える範囲ですが、庫内の空気を介した冷却のため、腹部を短時間で冷やすことはできません。安置直後の急速冷却には、ドライアイスによる直接的な冷却が必要です

さらに、ドライアイスを適切に当てていても注意すべき点があります。ドライアイスは通常、腹部を中心に装着するため、顔や足先など冷えにくい部分には保冷が及びにくくなります。肝硬変等により全身状態が進行していた方は、死後の状態変化が早く出やすい傾向が現場では見られます。顔色の変化(黄疸)はそうした全身状態の一つのサインであり、こうした場合はドライアイスの当て方や量を調整するなど、一段の配慮が必要です。

肝硬変以外にも、腎不全や心不全などむくみ(浮腫)を伴う疾患のある方は、体液が多いことなどから状態変化が早く進みやすい傾向が現場では見られます。こうしたご遺体をお預かりする際は、通常以上に状態の確認頻度を上げることをおすすめします。

正しい併用の手順

① 初回装着(安置前)

病院等からご遺体をお引き取りした後、冷蔵庫で安置する前に、長方形に4つにカットされたドライアイス計10kgを、胸からお腹にかけての腹部中心に並べて装着します。ご遺体の状態によっては、顔の横や頭の下にも追加で置くことがありますが、顔には直接近づけすぎないよう注意します。体格の大きい方は10kgでは十分に冷却できない場合があり、その際は20kgに増量して対応することもあります。

①基本配置 胸〜腹部 10kg ②状態により 顔の横・頭の下 (近づけすぎない)
ドライアイスは胸〜腹部を中心に基本配置。ご遺体の状態により顔の横・頭の下にも補助的に配置するが、顔には近づけすぎない

② 交換・追加のタイミング

ドライアイスがなくなる目安として、2〜3日おきに10kgを当て直します。ただし火葬・葬儀の日程が近づいている場合は、タイミングを見て再装着を行わないこともあります。置き方は、基本的に初回と同じ位置に当て直します。

③ 日々の状態確認

弊社搬送部では、ご遺体の状態を毎日チェックしており、腐敗の進行がないかを確認しています。ご遺体の状態には個体差があるため、画一的な対応ではなく、都度状態を見ながら判断することが重要です。

ドライアイス使用時の安全上の注意

消費者庁は2023年9月21日、「棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意」という注意喚起を公表しています。

ドライアイスは−78.5℃で固体から直接気体化し、1kgのドライアイスは約500Lの気体に膨張します。棺のような狭い密閉空間では、開けた際に顔を近づけることで二酸化炭素濃度が短時間で上昇し、意識消失に至る危険があるとされています(20分後に意識消失レベル=濃度約30%を超え、4時間後には約90%に達するとの報告があります)。

一方、ご遺体用冷蔵庫や安置室のようにある程度の容積がある空間では、弊社の運用の中でこうした事故が問題になったことはありません。二酸化炭素は空気より重いため庫内下部に滞留しやすく、人の顔の高さでは影響が出にくいと考えられます。ただしこれはあくまで現場での経験に基づく見解であり、科学的に安全性を保証するものではありません。庫内での作業や面会の際は、換気を心がけることをおすすめします。特に、棺を開けた状態で顔を近づける場合は、狭い密閉空間と同様のリスクがあることを踏まえて注意してください。

棺内(狭い密閉空間) 顔の高さ CO2が顔の高さまで 達しやすい 冷蔵庫・安置室(広い空間) 顔の高さ CO2は下部に滞留 顔の高さには届きにくい
密閉された棺内では顔の高さまでCO2が達しやすいのに対し、容積のある冷蔵庫・安置室ではCO2が下部に滞留しやすいと考えられます(経験則であり安全性を保証するものではありません)

INPEACE冷蔵庫の安全設計との組み合わせ

オゾン発生器・殺菌灯は、ドライアイスから発生する二酸化炭素そのものを除去するものではなく、あくまで庫内の臭気分解・除菌を目的としたオプションです。ドライアイスを庫内に大量に持ち込んだ状態でも、庫内の温度管理やセンサー類に異常が出るといった報告は、これまで弊社ではありません。ドライアイスによる初期冷却と、冷蔵庫による安定した温度管理・衛生対策(結露防止ヒーター、オゾン発生器、殺菌灯、鍵付きセキュリティ)を組み合わせることで、それぞれ単体では対応しきれない課題を補い合う運用が可能になります。

まとめ:安全に安置するためのチェックリスト

  • 冷蔵庫だけに頼らず、安置前に必ずドライアイスで初期冷却を行う
  • ドライアイスは腹部中心に、必要に応じて顔の横・頭の下にも(顔には近づけすぎない)
  • 体格の大きい方は10kgでは冷却不足になることがあり、20kgへの増量も検討する
  • 交換の目安は2〜3日おき。火葬・葬儀日程を見て再装着の要否を判断する
  • 肝硬変・腎不全・心不全等、むくみや状態変化が出やすい持病のある方は、通常以上に状態確認の頻度を上げる
  • 棺を開けて面会する際は、密閉空間でのCO2滞留に注意し換気を心がける
  • 冷蔵庫のオゾン発生器・殺菌灯は臭気・除菌対策であり、CO2対策ではないことを理解しておく
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