ご遺体を冷蔵庫で安置できる期間はどのくらい?
日数の目安と法律上の注意点
冷蔵庫+ドライアイス、エンバーミング——保全方法によって安置期間はどう変わるのか、30年の搬送実績に基づいて解説します。
結論:安置期間は「保全方法」次第で1週間〜50日程度まで幅があります。
ご遺体を冷蔵庫でどのくらいの期間安置できるかは、法律・保全方法・地域の状況によって幅があります。結論から言うと、冷蔵庫とドライアイスの併用であれば1週間程度、エンバーミングを併用すれば1ヶ月〜50日程度が実務上の目安です。法律上「死後何日以内に火葬しなければならない」という上限日数の規定はなく、安置期間を左右するのは主に火葬場の予約状況とご遺体の保全方法です。
法律上の注意点
「墓地、埋葬等に関する法律」第3条により、死亡後24時間以内の火葬・埋葬は禁止されています(感染症法上の特定の感染症による死亡の場合を除く)。これは、蘇生する可能性を考慮した規定です。
一方、「死後何日以内に火葬しなければならない」という上限日数を定めた法律はありません。安置期間の長さそのものを直接規制する法律は存在せず、実務上の期間は火葬場の予約状況やご遺族の事情によって決まります。
いつ冷蔵庫に入れるのか(タイミングと納棺の状態)
「ご遺体は何日後に冷蔵庫に入れるのか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃいますが、実務上は病院等からご遺体をお引き取りし、安置所に到着してすぐというのが基本です。数日置いてから冷蔵庫に入れるようなことはありません。
ただし、すべてのご遺体が冷蔵庫で安置されるわけではない点にも注意が必要です。自宅安置を選ばれる場合は、そもそも冷蔵庫を使いません。この場合は葬儀の日まで、ドライアイスを交換しながら安置するのが一般的です。
冷蔵庫に安置する場合も、納棺のタイミングにはいくつかのパターンがあります。防水シーツ等にくるんだ「未納棺」の状態のまま冷蔵庫に安置するケースもあれば、すぐに棺へ納めてから安置する葬儀社もあります。
特に臭いが出ているご遺体の場合は、棺に納め、ドライアイスを入れたうえで棺の隙間を養生テープ等で目張りしてから冷蔵庫に安置するケースがあります。ただし、こうした対応をしても臭いが庫内に移ることがあるため、通常のご遺体とは別の冷蔵庫に分けて預かるという運用を取ることもあります。
冷蔵庫での安置期間の目安
はじめに大切な注意点があります。ここでいう「安置できる期間」とは、あくまで冷蔵庫で物理的にお預かりできる期間の目安であり、「その期間は腐敗が進行しない」ことを保証するものではありません。ご遺体の状態(亡くなる前の病状等)によっては、同じ日数でも腐敗の進行スピードは大きく異なります。ご家庭の冷蔵庫で生肉を保存する場合と同じように、まず十分に冷やすこと(ドライアイスによる初期冷却)が、腐敗を遅らせるうえで重要です。状態によって腐敗が進みやすいケースについては、ドライアイス併用ガイドで詳しく解説しています。
実務上、冷蔵庫にドライアイスを併用した状態での安置期間は、1週間程度が一つの目安になります。弊社でお預かりする案件で最も多いのは、神奈川県内で4日程度です。
一方、身元が判明していないご遺体の場合、数ヶ月単位でお預かりするケースもあります。この場合、腐敗が進行するというよりも、水分が抜けて干からびていくような状態変化になります。
安置期間の長さは、火葬待ちの状況にも左右されます。亡くなる方の数(需要)と火葬場の受け入れ枠(供給)のバランスが崩れている地域では、火葬場の予約が取りづらくなり、安置期間が延びる傾向があります。いわゆる「火葬待ち問題」は、現時点で劇的に安置期間を押し上げている実感はありませんが、地域差を伴いながら徐々に進行している可能性があります。
エンバーミングという選択肢
エンバーミングとは、ご遺体を消毒・保全・修復する技術で、これを施すことで安置期間を大幅に延ばすことができます。弊社(吉澤企画)の葬祭部門では、提携するエンバーミング施設で実施することがあり、他社からお預かりしたご遺体をエンバーミング施設へ搬送することもあります。
実務上、エンバーミングを施したご遺体は1ヶ月程度の安置には問題がないとされており(定期的なケアは必要)、条件によっては50日程度まで安置可能ともいわれています。
エンバーミングの目的は、単に保全期間を延ばすことだけではありません。グリーフケアの観点から、ご遺族とのお別れの期間を延ばしたり、修復技術と組み合わせてご遺体を生前に近い状態に保ったりすることも目的の一つです。
国内ではエンバーミングはまだ「浸透過程」にある技術ですが、実施できる業者は着実に増えており、単価も徐々に下がってきているといわれています。
なお、身元が判明していないご遺体にエンバーミングを行うことはありません。エンバーミングには費用がかかるため、費用を負担するご遺族等の存在(出資者)が前提となるためです。身元不明のご遺体を長期間お預かりする場合は冷蔵庫での保管が中心となり、前述の通り、腐敗というより乾燥が進んでいく状態変化になります。
まとめ:安置期間を検討する際のチェックリスト
- 死後24時間以内の火葬・埋葬は法律で禁止されているが、上限日数の規定はない
- 冷蔵庫に入れるのは安置所に到着してすぐ。数日置いてからではない
- 自宅安置を選ぶ場合はそもそも冷蔵庫を使わず、ドライアイスのみで対応する
- 未納棺のまま冷蔵庫に安置するケースと、すぐ納棺してから安置するケースの両方がある。臭いの強いご遺体は棺を目張りし、別の冷蔵庫に分けて預かることもある
- 「安置できる期間」は物理的にお預かりできる目安であり、「腐敗しない期間」を保証するものではない。ご遺体の状態によって進行スピードは変わる
- 冷蔵庫+ドライアイスでの安置は1週間程度が目安。実際の平均的な預かりは4日程度
- 身元不明のご遺体は数ヶ月単位の保管になることもあるが、腐敗ではなく乾燥(干からびる)状態変化になる
- エンバーミングを施せば1ヶ月〜50日程度の安置が可能(定期的なケアは必要)
- エンバーミングは保全目的だけでなく、グリーフケア・修復の観点もある
- 身元不明のご遺体にエンバーミングは行われない(費用を負担するご遺族等の存在が前提のため)
- 安置期間が延びやすい地域は、火葬場の需要と供給バランスが崩れている傾向にある