INPEACE

移乗ボードが変える人員配置
女性・ベテランが活躍できる現場へ

ご遺体の移乗・搬送は、長らく「体力のある特定のスタッフ」に頼らざるを得ない業務とされてきました。この前提を変えることが、人手不足の葬祭業における人員配置の自由度を大きく左右します。

結論:ご遺体搬送の「体力頼み」をやめると、人員配置の自由度が上がります。

ご遺体の移乗・搬送作業は、長らく「体力のある特定のスタッフ」に頼らざるを得ない業務とされてきました。しかし、この前提そのものが、実は人手不足の葬祭業において人員配置を硬直させ、採用の間口を狭め、シフトの融通を利かなくしている要因になっています。移乗ボード「エアリースライド」のような補助具は、単なる「作業を楽にする道具」ではなく、移乗作業を「体力のある人にしかできない仕事」から「誰でも1人で安全にできる仕事」に変える、人員配置の自由度を左右する設備投資です。女性スタッフ・ベテランスタッフが第一線で活躍できる現場を作れるかどうかは、この一点にかかっています。

なぜ「人員配置」が葬祭業の経営課題なのか

葬儀件数はこの20年で8割近く増加している一方、業界の人手不足は深刻です。厚生労働省の統計によれば、葬儀師・火葬係の有効求人倍率は7.59倍(令和6年12月時点)に達しており、全産業平均の1.35倍を大きく上回ります。人手不足を理由に施行の依頼を断らざるを得ないケースも報告されています。

7.59倍葬儀師・火葬係の有効求人倍率(令和6年12月)
1.35倍全産業平均の有効求人倍率
8割増葬儀件数のこの20年での増加率

こうした状況下で経営者が直面するのは、「採用できる人の数を増やす」ことがそもそも難しいという現実です。だとすれば、採れる打ち手は一つしかありません。今いる人員、そしてこれから採用しうる人員の「対応可能な業務範囲」を広げることです。ご遺体の移乗・搬送が「体力のある特定の人しかできない仕事」であり続ける限り、この打ち手は使えません。

ご遺体移乗という「見えない体力仕事」

葬祭業は「落ち着いた、きれいな場所での仕事」というイメージを持たれがちですが、現場の実態は異なります。神奈川県川崎市の葬儀社「家族葬のウィル かわさき」で働く大場未来さんは、入職前とのギャップをこう振り返っています。

「前職で子供たちを抱っこしていたので力には自信があったんですけど、ご遺体となると重さが全然違ったので……(苦笑)」

家族葬のウィル かわさき 大場未来様

移乗ボード導入前、大場さんはストレッチャーからリフターや冷蔵庫への移乗を、複数人がかりで、あるいは1人の場合は片側ずつ少しずつずらすという方法で行っていました。

「手伝ってくれる職員さんがいるときは2人でよいしょって持ち上げてましたね。1人の時は足元を持ち上げて少しずらして、次に頭側を持ち上げて少しずらして……片側ずつ順序よく、徐々にずらしていくような形で何回も繰り返してご移乗していました。落としちゃうかもという不安があったので、とくに気を付けて行っていました」

家族葬のウィル かわさき 大場未来様

この「想像以上の力仕事だった」という実感は、大場さん個人に限った話ではありません。INPEACEが展示会等で出会った現場スタッフ、特に女性スタッフからは、同様の声が繰り返し聞かれるといいます。

「移乗の瞬間が一番緊張する」

「思った以上に体力が必要で、心配になる」

「夜間に人数が揃わないと、正直ちょっと怖い」

「新人のころ、移乗だけは本当に怖かった」

こうした声が意味するのは、「体力に自信のない人材(女性、体格の小さい人、高齢のベテランスタッフ等)を、移乗業務の戦力として計算に入れられていない」という、人員配置上の制約です。

厚生労働省も「持ち上げない」を原則としている

この課題は、実は葬祭業だけのものではありません。厚生労働省は「職場における腰痛予防対策指針」において、重量物を扱う作業一般に加え、近年は介護・看護分野における移乗介助についても指針を拡充しています。指針が示す原則は明確です。

腰部に著しく負担がかかる移乗介助等では、リフトやスライディングシート等の福祉用具を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこととする。

これは、介護・看護の現場で長年積み重ねられてきた知見です。厚生労働省によれば、職場での腰痛は休業4日以上の職業性疾病のうち約6割を占める労働災害であり、特に社会福祉施設での発生件数が大幅に増加してきた経緯から、指針の適用範囲が介護・看護作業全般に広げられました。

「人を人力で持ち上げない」という原則は、介護・看護分野では既に標準的な考え方です。ご遺体も、体格や状態によって40kgから150kg程度までの幅があり、決して軽い負荷ではありません。人の手で支えながら移乗するという作業内容の性質を考えれば、本質的には同じ課題を抱えています。介護分野で移乗介助用リフトやスライディングボードが「体力に関係なく誰でも安全に移乗介助ができる」体制づくりの前提になっているように、葬祭業における移乗ボードも同じ役割を果たし得ます。

この考え方に沿って移乗介助用具の普及を進めた自治体の事例では、実際に効果が確認されています。福岡県が実施した「ノーリフティングケア普及促進事業」では、取り組み1年目の施設で62%だった介護職員の腰痛有訴者率が、取り組み5年目の施設では47%まで低下し、人力での抱え上げ介護の実施率も81%から40%まで半減しました。取り組み期間が長い施設ほど、移乗介助用の福祉用具の導入数も増加しています。「用具を使って持ち上げない」という発想への転換は、実際に身体的負担を大きく減らせることが、この事例からも裏付けられています。

62%→47%福岡県の普及促進事業:腰痛有訴者率の変化(1年目→5年目)
81%→40%同事業:人力での抱え上げ介護実施率の変化

介護分野では当たり前、葬祭現場ではまだ存在しないカテゴリー

移乗ボード(スライディングボード)そのものは、実は目新しい道具ではありません。介護の世界では既に確立された福祉用具カテゴリーであり、モルテン、パラマウントベッド、タカノ、リブドゥコーポレーションといった大手メーカーが、長方形型・ブーメラン型・三角型、大型・コンパクト・折りたたみ式など、用途に応じた多様な製品ラインナップを展開しています。要介護2以上の認定があれば介護保険を使って原則1割負担でレンタルできる、生活に密着した標準的な用具です。

一方、葬祭業界に目を向けると状況はまったく異なります。ご遺体の搬送手段としては専用ストレッチャーや寝台自動車が広く使われていますが、移乗そのものを補助する専用の福祉用具というカテゴリーは、公開されている業界展示会情報・専門メディア・メーカー情報を確認する限り見当たりません。介護分野で何十年もかけて「持ち上げない介護」の標準装備として定着してきた発想が、同じように40〜150kg程度の重さがあるご遺体を、同じように緊張感を伴う場面で人の手で支える葬祭業界には、まだ届いていないというのが実情です。

比較項目介護分野葬祭業界
移乗補助具というカテゴリー確立済み(多数メーカー)専用カテゴリーがまだ存在しない
製品バリエーション形状・サイズとも多様汎用品の流用が中心
公的な後押し介護保険レンタル対象該当する制度なし
「持ち上げない」の原則厚労省指針で標準化普及の途上

エアリースライドは、この空白地帯にご遺体搬送専用の移乗補助具として参入している、現時点で確認できる範囲では数少ない――あるいは唯一に近い――存在です。介護分野では当たり前になっている発想を、葬祭業界で専用製品としてカテゴライズする取り組みそのものが、まだ始まったばかりだといえます。

移乗ボードが変える、現場の人員配置

エアリースライドを導入した大場さんは、この「体力頼み」の構造から抜け出した変化を、次のように語っています。

「使うようになってから、何回も繰り返し移動の作業をしなくていいので、とっても時短にもなりましたし、落としちゃうかもしれないっていう心配が格段に減りました」

家族葬のウィル かわさき 大場未来様

操作の習得にも、特別な訓練は必要ありませんでした。

「1回その業種の方に使い方を教えてもらって一緒にやってみて、次からは全然1人で使いました」

家族葬のウィル かわさき 大場未来様

そして今では、性別や体力に関係なく、1人で安全に移乗作業を行える体制が現場に定着しています。

「1人で移乗作業が簡単にできるのですごくおすすめです。私みたいに女性の方でも使えますし、男性の方でも使ったらもっと作業が楽になるんじゃないかなと思います。上司の方(男性スタッフ)も、エアリースライドが無いと搬送に行かない!と冗談で言ったりしてます(笑)」

家族葬のウィル かわさき 大場未来様

この変化がもたらすのは、単なる「作業の負担軽減」ではありません。「移乗作業ができる人」の定義が、「体力のある特定のスタッフ」から「操作方法を知っている全スタッフ」に変わるという、人員配置上の構造変化です。搬送用の車、安置施設、ホールの倉庫と複数の場所に補助具を常備しておけば、その場に居合わせた誰もが1人で対応できます。特定のベテランスタッフが搬送や他の案件に出てしまうと現場の対応力がゼロになる、という属人的な体制からの脱却です。

経営視点で見た人員配置の自由度

「誰でも移乗作業に対応できる」体制は、次のような経営上のメリットに直結します。

採用対象の拡大

体力面での不安から敬遠されがちだった業務が「誰でもできる仕事」になることで、女性・体力に自信のない人材・体力の衰えたベテランスタッフも含め、採用対象を狭めずに済みます。人手不足が深刻な業界において、採用母数を広げられること自体が競争力になります。

シフト・配置の柔軟化

特定のスタッフに移乗業務が偏らなくなることで、シフトを組む際の制約が減ります。夜間・少人数体制であっても、居合わせたスタッフが1人で移乗対応できれば、「人数が揃うまで対応できない」という機会損失を防げます。

ベテランスタッフの継続活躍

経験・接客スキルは豊富でも、体力面の負担から現場業務を敬遠しがちだったベテランスタッフが、移乗作業の不安なく現場に立ち続けられます。経験の浅いスタッフへの技術・接客ノウハウの継承という観点でも、ベテランが長く現場に残れることの価値は大きいといえます。

育成期間の短縮

体力や経験に左右されにくい環境が整うことで、業務の属人化が減り、新人が独り立ちするまでの育成期間も短縮しやすくなります。

まとめ

  • 葬祭業は有効求人倍率7.59倍という深刻な人手不足に直面しており、「採用できる人を増やす」以上に「今いる人員の対応可能業務を広げる」ことが現実的な打ち手になる
  • ご遺体の移乗作業は「体力のある特定の人にしかできない仕事」とされがちだが、これは現場スタッフ、特に女性スタッフに広く共有される実感である
  • 厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、介護・看護分野において「人力による抱上げを原則行わせない」ことを既に標準としており、福岡県の普及促進事業では腰痛有訴者率62%→47%、抱え上げ介護実施率81%→40%という効果も確認されている
  • 移乗ボード(スライディングボード)自体は介護分野では大手メーカー各社が製品化する確立されたカテゴリーだが、葬祭業界には移乗補助具という専用カテゴリー自体がまだ存在しておらず、エアリースライドはこの空白地帯に参入している数少ない存在である
  • 移乗ボード導入により、「移乗作業ができる人」の定義が「体力のある特定のスタッフ」から「操作方法を知っている全スタッフ」に変わり、属人化が解消される
  • この変化は、採用対象の拡大・シフトの柔軟化・ベテランスタッフの継続活躍・育成期間の短縮という形で、人員配置の自由度と経営の安定性を高める

エアリースライドは、1週間の無料サンプル貸出でお試しいただけます。
実際の現場でその違いを体感してください。

無料サンプル貸出に申し込む
上部へスクロール