安置室ビジネスの収益化に
電動棺リフターが欠かせない理由
少人数運営で収益化する安置室ビジネス。その前提を電動化なしで支えることはできません。実際の導入事例と一次データから解説します。
結論:少人数運営の安置室ビジネスは、電動棺リフターなしには成立しません。
安置室単独出店による収益化モデルは、いま業界で注目されています。船井総合研究所が開催する有料セミナーでは「投資回収1年」「施行件数が年間100件増加」といった実績が紹介されており、新規参入を検討する葬儀社・事業者は少なくありません。
しかし、このモデルには前提条件があります。少人数運営で施行件数を最大化することです。そしてこの前提は、ご遺体の移乗・搬送という100〜150kgの重量物を扱う作業を、電動化しないままでは実現できません。人力での移乗作業は、労災リスク・スタッフの身体的負担・そして「人が集まるまで作業を待つ」という時間的ロスを生みます。安置室ビジネスの収益性は、電動棺リフターという設備投資の有無によって大きく左右されるというのが、実際の運用データから見えてくる結論です。
なぜ今「安置室ビジネス」が注目されているのか
葬儀件数はこの20年で8割近く増加しています。高齢化により死亡数そのものが増えている一方、火葬場のキャパシティは急には増やせないため、「亡くなってから火葬まで」の期間、ご遺体を安全に安置しておく需要は年々高まっています。
こうした背景から、式場や斎場を新設せずに「安置室単独」で新規事業を立ち上げる動きが広がっています。船井総合研究所のセミナーでは、既存の葬儀社が安置室単独出店によって年間施行依頼数を135%に伸ばし、投資回収を1年程度で実現したという実績が紹介されています。設備投資が比較的軽く、既存の葬儀施行網に組み込みやすいことが、このビジネスモデルが注目される理由です。
収益モデルの前提:少人数運営と施行件数の最大化
安置室単独ビジネスの収益構造はシンプルです。式場のような大規模な人員・設備を持たずに、限られた人数で多くの施行件数をさばくことで利益率を高めます。裏を返せば、この収益モデルは「1件あたりにかかる人手を最小化できるかどうか」に強く依存しているということです。
弊社がシルフィーリフトを導入いただいている神奈川県鎌倉市の小規模斎場「株式会社鎌倉庵」(代表取締役 大村英二様、月間20件程度の施行規模)は、まさにこの課題に直面していました。大村様はインタビュー動画の中で、導入の経緯をこう語っています。
「実際にやっぱり一番の問題ってご遺体のご移動だったり、1人ではどうしても動かせないとか、1人ではどうしても面会の対応ができないとか、そういったことが多々あるじゃないですか。他の葬儀社さんも一緒だと思うんですけど、どうしても複数人でオペレーションを組まなきゃいけないという中で、文明の力でなんとか人員不足を解消できないかなと思って、ずっと探していたんですよ」
株式会社鎌倉庵 代表取締役 大村英二様
これは、船井総研が説く少人数運営モデルの前提を、現場の経営者自身が言語化した言葉です。搬送に出たり他の案件対応をしていたりで、スタッフがホールに1人だけになる場面は珍しくありません。大村様は続けます。
「他の従業員がちょっと搬送で出てしまったりすると、ホール番として残る子はそんなに大人数残しておけない。どうしても面会対応やホール内でのご遺体の移動はかなりの数あるので、まず取り回しがいいもの、1人でも簡単に動かせるものという条件を探していたら見つかった、という感じになりました」
株式会社鎌倉庵 代表取締役 大村英二様
1人でも安置作業に対応できることで、2〜3人のスタッフが待機していたとしても、その人員を他の業務(搬送・接客・別件対応)に振り向けられるようになります。人力での移乗には複数人が必要になるため、人が揃うまで安置作業を待つ、という時間的ロスが発生しがちですが、電動化によってこの「安置作業待ち」自体がなくなります。少人数運営を前提とする収益モデルにおいて、これはそのまま施行対応可能件数の上限を引き上げることに直結します。
株式会社鎌倉庵様(神奈川県鎌倉市)へのシルフィーリフト導入体感インタビュー(INPEACE公式YouTubeチャンネル)
なぜ電動化なしにこのモデルが崩れるのか
少人数運営を電動化なしで実現しようとすると、次の3つの壁にぶつかります。
1. 深刻な人手不足
葬祭ディレクターの有効求人倍率は7.59倍(令和6年12月時点)に達しており、全産業平均の1.35倍と比べて実に5.6倍という水準です。人を増やして対応するという選択肢自体が、業界全体で取りづらくなっています。少人数でも回せる体制を作ることは、選択肢ではなく前提条件になりつつあります。
2. 労災リスクと身体的負担
ご遺体の移乗は100〜150kgの重量物を、複数人がかりで持ち上げる作業です。人力での移乗作業は腰部への負担が大きく、労災リスクを伴います。株式会社鎌倉庵様では、体重約240kgのご遺体を搬送業者が複数人がかりでようやく寝台から下ろしたケースがありましたが、その先の移乗はシルフィーリフトが1人で対応できたといいます。大村様は「1人で動かしていて床との摩擦の問題かタイヤが動きづらいという時はあるが、狭いところの取り回しに困ったことはない」とも語っており、通常の体格を超えるご遺体でも人力に頼らずに済んだことが、大きな安心材料になったとしています。スタッフの高齢化・女性スタッフの増加が進む中、身体的負担の大きい作業を前提にした体制は長期的に維持しにくくなっています。
3. 属人性というボトルネック
特定のベテランスタッフでなければ安全に移乗作業ができない、という属人的な体制は、そのスタッフが搬送や他の案件に出てしまうと安置室の対応力がゼロになることを意味します。電動化は、経験の浅いスタッフや女性スタッフでも安全に単独対応できる体制を作り、属人性を解消します。実際に大村様は「女の子1人でもご遺体の移動ができるようになった」と話しており、狭い斎場・少ない人数で運営している現場ほど、この効果は大きいといいます。
大村様は、リフター導入の意味をこう表現しています。
「リフターがあるから、その1人がいらないよ、という話ではなくて、万が一の時でも対応できるという“保険”になる。何があるか分からない商売なので、その上で言ったら導入コストとしてはすごく安いと思います」
「導入コストで高い安いを判断する時、その分の人を1人雇ったら毎年これぐらいかかるよね、という換算で比べる方が多いと思うんですけど、それで言ったら間違いなく安いはずなんですよね」
株式会社鎌倉庵 代表取締役 大村英二様
「1人分の人件費を削減する」のではなく、「いざという時に事業が止まらないための保険」として設備投資を捉える発想は、慢性的な人手不足の中で少人数運営を成立させようとする安置室ビジネスの経営判断そのものです。
数字で見る省力化効果
弊社がシルフィーリフト導入企業の省力化効果としてまとめたデータ(中小企業省力化投資補助金の申請資料より)では、次のような変化が確認されています。
- 移乗作業に必要な人数:2〜3人 → 1人
- 1回の移乗作業にかかる時間:5分以内で完結
- スタッフが揃うまでの待機時間:実質ゼロに
- 扱う重量:100〜150kgの重量物を電動で操作、人力での持ち上げが不要に
この省力化効果は、①属人性の解消、②人員リソースの最適化(1人で対応できることで他の人員を他業務に配置可能)、③多様な人材の活用(体力に自信のないスタッフ・女性スタッフでも対応可能)という3つのロジックで成り立っています。シルフィーリフトは、この用途に特化した電動棺専用リフターとして国内で唯一の製品です。
国も後押しする省力化投資
これは一企業の取り組みにとどまりません。経済産業省は「省力化投資促進プラン ―生活関連サービス業(冠婚葬祭業)―」を策定し、冠婚葬祭業における省力化投資を政策的に後押ししています。人手不足が構造的な課題である業種として、国が名指しで省力化投資を推進しているという事実は、安置室ビジネスにおける電動化投資の妥当性を裏付けるものです。中小企業省力化投資補助金など、実際に活用できる補助金制度も存在します。
この構図は、介護業界における移乗介助用リフト機器の状況とよく似ています。介護現場での移乗介助用リフトの導入率はわずか4.9%にとどまる一方、実際に使用したことのある人の94%が腰部負担の軽減を実感しているというデータがあります。「効果は明らかなのに、普及が追いついていない」という同じ構造が、隣接業界にも存在しているのです。安置室・葬祭業における電動リフターも、現時点ではまだ知られていないだけで、同様のポテンシャルを持っていると考えられます。
海外では既に確立された機材カテゴリー
電動での棺・ご遺体移乗機器は、日本ではまだ珍しい存在ですが、海外に目を向けると事情が異なります。米国にはAmerican Mortuary Equipment(mymortuarycooler.com)、MOBI Medical、Mortuary Lift Companyといった専門メーカーが存在し、電動リフターは葬祭設備の一カテゴリーとして確立しています。中国のJiangsu Rooe Medical Technologyなど、アジアの医療・葬祭機器メーカーからも同種の製品が供給されています。AUDENが技術提携する製品の源流も英国にあり、電動での遺体移乗機器そのものは国際的に見れば新しい概念ではありません。日本の葬祭業界においてこのカテゴリーの認知が広がっていないだけであり、これから普及余地の大きい分野だといえます。
まとめ
- 安置室単独出店による収益化モデルは、船井総研のセミナー等でも紹介される注目分野だが、その前提は「少人数運営で施行件数を最大化すること」
- 人力での移乗作業には、深刻な人手不足・労災リスク・属人性という3つの壁があり、これらは少人数運営モデルと本質的に相性が悪い
- 電動棺リフター導入により、移乗作業は2〜3人→1人、5分以内で完結し、スタッフの待機時間や「安置作業待ち」がなくなる
- 国も冠婚葬祭業の省力化投資を政策的に後押ししており、補助金の活用も可能
- 介護業界の移乗リフトと同様、「効果は明らかだが普及していない」という状況にあり、今後の普及余地は大きい
- 電動での遺体移乗機器は海外では既に確立された機材カテゴリーであり、日本でも今後標準装備になっていく可能性がある