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安置室・式場開設チェックリスト
必要設備と見落としがちなポイント

安置室・小規模式場の開設は「冷蔵庫を置けば終わり」ではありません。自社で複数の安置施設を作ってきた経験から、見落としがちなポイントをチェックリストで整理します。

結論:安置室・式場の開設は「冷蔵庫を置けば終わり」ではありません。

安置室・小規模式場を新たに開設する際、多くの方がまず気にするのは「冷蔵庫をどう選ぶか」です。しかし実際に自社で複数の安置施設を作り、運営してきた経験から言えるのは、開設準備で見落とされがちなのはむしろ設備以外の部分だということです。初期費用の思い込み、搬送に関わる許認可、近隣対応——これらを見落とすと、せっかく作った施設が想定通りに稼働しない、あるいはトラブルの原因になります。本記事では、設備・費用・法律・運営・近隣対応の5つの観点から、開設前に確認すべきチェックリストを整理します。

1設備面

安置室に最低限必要な設備は、次の3つに整理できます。

  • ご遺体用冷蔵庫(個別安置型/プレハブ型/自作型のいずれか。詳しくは選び方ガイドを参照)
  • 電動棺リフター(後述する通り、少人数運営を前提にするなら実質的に必須の設備)
  • 電源・空調・排熱排水(冷蔵庫の設置環境要件。単相100Vか三相200Vか、室外機の排熱スペース、結露対策等)

このうち、電動棺リフターは「あれば便利」ではなく、実質的な必須項目として捉えるべきです。候補Aの記事で詳しく解説した通り、安置室単独ビジネスの収益モデルは少人数運営が前提であり、100〜150kgのご遺体を人力で移乗する体制のままでは、労災リスク・スタッフの定着しにくさ・対応の遅れという形でコストがかさみます(詳しくは「電動棺リフターがないとどうなる?」を参照)。

2費用の思い込みを外す

開設をためらう最大の理由は、多くの場合「初期費用がどれくらいかかるか分からない」という不安です。しっかりと作り込む場合、物件取得費・内装工事費・設備費・備品費・開業手続き費用を合計すると1,800万円〜が目安になります。

しかし、これはあくまで「フル装備で始める場合」の金額です。実際には、規模や予算に応じて次のような始め方があります(弊社実証済み)。

  • 最速最小試験導入:安置台+ドライアイス(またはスーパーアイス)。空いている倉庫や部屋があれば、50万円〜という最短・最小コストでスタート可能
  • 自作型冷蔵室+安置台:大工に小屋を作ってもらい、天井に冷蔵機設置用の開口部を作る方式。8体前後の容量が冷蔵機込みで100万円程度で確保できることも
  • 個別安置冷蔵庫:警察等からの長期預かり依頼がある、稼働基数の見込みがある場合におすすめ。二体収納型等から始めて事業成長とともに追加していく方法も
  • プレハブ冷蔵庫+安置台:常に複数名を預かる、またはこれから件数を伸ばす予定の企業向け。大は小を兼ねる考え方

ランニングコストについても誤解が生まれやすいポイントがあります。一般的には人件費(従業員1人あたり月25万円〜)・光熱費・消耗品費・広告宣伝費を合計して月35万円〜を見込む必要がありますが、新たに人を雇わず、電動棺リフターと安置台を使ったワンオペ運営の体制を整えれば、人件費はほぼ0円で運用できます。既存の事務スタッフが面会対応やドライアイス交換などを兼務できるようになるためです。人力オペレーションを前提にすると「新規雇用が必要」という思い込みにつながりやすいですが、電動化を前提にすれば必要な追加人員の見積もりそのものが変わります。

3法律・届出面

  • 死後24時間以内の火葬・埋葬禁止(墓地、埋葬等に関する法律 第3条)。安置施設そのものを規制する条文ではないが、火葬までのスケジュールに関わる基本ルール
  • 自治体の指導要綱の確認:届出時期(開設の一定期間前までの届出)、標識掲示、周辺への配慮等、自治体ごとに定められた手続きがある
  • 消防署への防火設備の届出:ご遺体安置施設そのものに特別な資格や許可は不要だが、防火設備の設置届出は必要
  • 「墓地、埋葬等に関する法律」「倉庫業法」は適用除外:安置施設単体を直接規制する規定は現状ないが、誤解されやすいポイントなので事前に行政機関へ確認しておくことが望ましい

そして、最も見落とされやすいのが次の2点です。

  • ご遺体の自社搬送には「一般貨物自動車運送事業」の許可が必要:ご遺体の搬送を自社の車両・人員で行う場合、貨物自動車運送事業法に基づき、国土交通大臣から一般貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者である必要があります。許可取得には時間と費用がかかり、運行管理・シフト管理の体制も必要になります。安置施設そのものの許認可ばかりに気を取られ、搬送の許認可を後回しにしてしまうケースがあるため注意が必要です。まずは昼間は自社搬送、夜間は外部委託とするなど、段階的に内製化していく方法もあります。
  • 血液・体液が付着した廃棄物の扱い:安置作業の中では、血液や体液が付着したガーゼ・手袋・シーツ等のゴミが発生します。「これは医療系の感染性産業廃棄物として特別な処理が必要なのでは」と迷う方も多いところです。環境省の「感染性廃棄物処理マニュアル」によれば、感染性産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)は病院・診療所・衛生検査所・介護老人保健施設・介護医療院・助産所・動物の診療施設・試験研究機関といった「医療関係機関等」からの排出物に限定されており、葬儀社・安置施設はこの対象に含まれていません。そのため、法律上は安置室で発生する血液・体液付着物は感染性産業廃棄物には該当しないと解されます。ただし、これはあくまで法令上の分類であり、実務上は通常の産廃業者でも目に見える血液・体液付着物の引き取りを断られるケースがあります。通常の産業廃棄物として処理できるものは普段の産廃業者にルートしつつ、血液・体液付着物については、必要に応じて特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者へのルートも確保しておくと安心です。自治体の指導要綱に廃棄物の扱いについて独自の言及がある場合もあるため、事前確認をおすすめします。

4運営体制面

  • 少人数・ワンオペを前提にした動線設計:候補A・Bの記事で触れた通り、安置室ビジネスの収益性は「1件あたりの人手をどれだけ減らせるか」に強く依存します。電動棺リフターがあれば、夜間に担当者1人でもご遺体の安置対応ができる体制を作れます
  • 24時間対応の体制設計:ご遺族にとって「いつでも安心して預けられる」という安心感は重要な価値です。24時間体制は人材確保やシフト管理の面で負担に感じられがちですが、電動化によって追加の人材確保をせずに対応できる体制を作れます
  • 搬送の内製化・外部委託の設計:全て自社搬送にするか、外部委託と併用するかを、許認可取得のタイミングと合わせて計画する

5見落としがちな最大のポイント:近隣対応

意外と見落とされがちですが、開設準備の中で最も慎重な対応が求められるのが近隣対応です。ご遺体安置施設は、地域住民にとって「死を身近に感じる施設」であるため、理解を得ることが重要になります。実際に、一時期首都圏では遺体安置施設の運営をめぐる反対運動が複数の地域で起きました。

  • 場所選びの段階から近隣への影響を考慮する
  • 法令で定められた手続きを行った上で、開業前に近隣住民向けの説明会を開催する
  • チラシ配布等で施設の運営方針や地域貢献について説明する
  • 騒音・臭い等、近隣に迷惑をかけないための配慮を徹底する

法律上の許認可さえクリアすれば開設できると考えがちですが、実際には近隣の理解を得るプロセスを軽視すると、開設後にトラブルへ発展するリスクがあります。弊社の霊柩事業部でも、複数の安置施設の新設・反対運動への対応を経験しており、場所選びや説明会の進め方についてのノウハウがあります。

まとめ:総合チェックリスト

  • 冷蔵庫(個別安置型/プレハブ型/自作型)を規模・予算に応じて選定する
  • 電動棺リフターを、少人数運営を前提にした実質的な必須設備として組み込む
  • 「1,800万円〜」という初期費用の思い込みを外し、50万円〜の小さな始め方の選択肢も検討する
  • ワンオペ運営を前提にすれば、月35万円〜想定していたランニングコストの人件費部分を大幅に圧縮できる
  • 墓地埋葬法・自治体の指導要綱・消防署への届出を確認する
  • ご遺体の自社搬送を行う場合は「一般貨物自動車運送事業」の許可が必要になる点を見落とさない
  • 血液・体液付着物のゴミは法律上「感染性産業廃棄物」には該当しないが、実務上は引き取り可否を通常の産廃業者に確認し、必要なら特別ルートも用意しておく
  • 少人数・24時間対応を前提にした運営動線を設計する
  • 開設前の近隣説明会等、近隣対応を軽視しない

「はじめて安置室を持つ」という方には、弊社搬送部門・霊柩事業部が複数の安置施設を新設してきた経験から、反対運動や説明会への対応も含めてご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

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